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ロマンはどこだ?

そのとき思ったことをなかったことにしないために

ピンクとグレー(映画)

映画 ニウス

pinktogray.com

 

シゲが書いた文字がシゲの大好きな『映画』という媒体になって話題になって広がっていくことを数年前に誰が予想出来ただろうか。その事実だけで胸がいっぱいだ。

とはいえ、よ。とはいえ、原作と作家の大ファンからしてみれば、わりと驚く演出や設定も多々あって、「嘘でしょ」と思ったシーンもあった。観終わってからもわりと悶々としていたのだが、ツイッターで多くが言及していた「行定監督の二次創作」という表現がすとんと腑に落ちた。そうだ。ピンクとグレーの設定を下書きにして組み立て直して、余白を描いた作品だった。

こういう「ピンクとグレー」の世界があったことに驚いた。

ちなみに「62分後の衝撃」については、腕時計とかみながらそわそわその瞬間を待っていたのですが、時間確認しなくてもすぐに「こ、これが噂の衝撃か~!!!」と分かるので無問題でした。

 

 高校生活のあたりで、りばちゃんが思いの外なんというか、く、ず……?でまず一驚きした。わ、わたしのりばちゃんはそんなことしないもん!そんなんじゃないもん!><と思うのだが、小説もそういう感じだったかなぁ。小説のりばちゃんとごっちはもう少し近いイメージだった。どちらもある程度スカしていて、だけど子供のように笑って。

映像になるとただ分かりやすく引き立ってしまうものなのだろうか。でも、演出としてある程度は強調させていると思う。時間も限られてるしね。

 

私は小説版ピングレはりばちゃんとごっちの二人の物語という捉え方をしているのだが、映画版は個々人の物語を繋いだ一連の流れだった。前半はごっち、後半はりばちゃん。「と」の意味が大きく違う。

原作のごっちはサリーと恋をするけど、映画版はただ姉貴しか見ていない(熱愛報道あったけどね!)。原作のごっちにはあった人間味が映画版からは綺麗になくなってしまっていた(そう思わせた柳楽くんすごい)

「やるしかない、やらないなんてないから」を信条とする非凡な二人の姉弟に巻き込まれた凡人りばちゃんの悲劇と再生。そういう対比を描くために、りばちゃんはよく言えば人間味あふれ、悪く言えば感情のまま動いてしまう性格として設定されていえるように見えた。

それが行定監督が考えたピンクとグレーの世界なんだなぁ。

原作のほうは「それは恋とか愛とかの類ではなくて」という危うい関係性のりばちゃんとごっちが描かれているが、映画のほうのそれはごっちとお姉ちゃんに引き継がれている。りばちゃんはある意味ごっち主演の恋物語映画の脇役だ。62分までは。恋物語を幕引きする演者として選ばれたりばちゃん。ごっちは、りばちゃんのこともちろん大切にしていたと思うけど、全部観終わってから考えると全部ごっちの掌の上でしかなかったのかなって思っちゃうな。殿上人。

小説はりばちゃんがごっちになるところで綺麗に幕引きされるけれど、監督はりばちゃんに対してそれを許さなかった。お前は生きる義務がある、と言うように。

りばちゃんはごっちが生きているときに一度はごっちバーターの仕事を断ったけれど、ごっちが死んだあとは結局ごっち発端の仕事を受けるようになる。

サリーも事務所社長も「りばちゃんは何もしていない。頑張っていない」と言う。そうだよなあ。言われてみれば、確かにそうなんだよなあ。「誰かになるなんて無理よ」ともはっきりと言われてる。

監督はりばちゃんにごっちになることを許さずにりばちゃんをりばちゃんとして再生させた。りばちゃんの物語が終わって始まった。

最後のシーンはシゲ主演舞台「セミナー」を思い出した。

 

この映画のテーマは「ピンクとグレー」よりはスピンオフの「だいじなもの」に近い気がする。何にもなれなかった自分、何かになれたその人の中に自分を求める自分。シゲが映画を見た後にスピンオフ書いたと聞いて(でしたよね)なるほどなぁと思った。

私が好きな小説「ピンクとグレー」の美しく残酷な人間離れした世界観はどこにもなかったけれど、映画「ピンクとグレー」は人間がとても人間らしくて、こっちに近づいてきていて、自分をどこか重ね合わせてしまうそんな物語だった。

 

私が好きなりばちゃんは小説版と漫画版にしかいないんだな!と思ったが、ゆうとくんのことはとても好きです。ゆうとくんも菅田くんも柳楽くんもすっごいな。

映画化の話が何度も出て、頓挫してという話をパンフでしていたけれど、やっぱり難しいんだろうな。なにをテーマにするか、どう描くか、どういう色彩をもってくるか。

小説の世界に沿うのか、飛躍するのか。誰が主人公なのか。

はっきり言ってしまえばさ、私の中での「正解」とぴたりと合うわけではなかったけれど、考えれば考えるほど「正解の一つ」だったなぁとしみじみする。