※ねたばれしてるよ(∵)
シゲアキさん3年ぶり、セミナー以来のアカデミックな舞台。
パンフレットのインタビュー一字一句からも彼の内面の変化が分かって面白い。
牢屋とかグリーンマイル(廊下)とか、そういう設備的なものを光で表現していて、面白いな~と思った。そして光で表現するからこそ、光の中のグリーンマイルを歩く人々の表情がよく映えて、やるせなさとか覚悟とかが伝わってくる。
わたしがシゲ担になったきっかけの舞台「SEMMINAR」は、ローレンという孤独な家庭環境の青年が周りを巻き込みつつ己の内省に苦しみ、己を開放していく舞台だった(たしか)(1回しか観てないから記憶があいまい)
それと比較すると本作は、セミナー以降の「6月のビターオレンジ」「中の人」と似て、シゲ演じる主人公が周りの人に巻き込まれ、影響され、かかわりあっていくストーリー。
ローレンに22歳(1か?)のシゲにしか表現できない若さと苦々しさと憂いがあるように、グリーンマイルもいまのシゲにしかできない、説得力が持たせられない舞台だなと思った。ほかのどの役者にもできないという話ではなく、シゲのキャリアのなかで今が一番ベストな演じどきだという話ね。
ローレンとポールは当たり前に全然繋がりのない人物なんだけど、シゲが演じたということで私のなかで一本でつながる人物になっている。自分との戦いに打ち勝ったローレンが、今度は世界と戦うポールになった、という設定が私の中にある(ローレン死んだ説もあった気がするけど私は一度死んで生き返った派)
そうやって重ねて見てたら、シゲめちゃめちゃ立派になったな~~と感慨深くなった。線も太くなったしね。えらい。
堂々と自信に満ちた佇まい、立ち振る舞い。看守の「主任」という役割に違和感がなかった。30歳のシゲにぴったりだ。
最後、電気椅子に座って死を目前にしたコーフィー(把瑠都さん)がポール(シゲ)を見つめるシーンがある。
10月14日の夜公演のとき、コーフィーの諦めたようなすべて受け入れたような、そしてすこし笑っているようなそんな表情を見て、ポールは言葉に詰まり、涙をこぼし、胸がつかえて死刑執行の合図が言えなくなっていた。
その、演者どうしの相乗効果、そういうものを目の当たりにして、どうしようもなく、泣いてしまった。
舞台は演者同士の掛け合いでただただ進んでいくばかりではなく、テンションが高まっていくこともあるんだなぁと、当たり前のことを改めて思った。
それまでに観たときは、白シャツにサスペンダーがセミナーっぽいとか、ぐるぐる歩き回るシーンがセミナーっぽいとか、なんだかそういう、「初めて見た舞台・セミナーといまのシゲ」という対比にばかりグッと来ていて、肝心の舞台内容自体では全然泣かなかった。
コーフィーもウォートン殺してるしなぁとか思うと、うーん、必ずしも「罪がない」わけではないしなぁと思ったりして。どこで泣くんだろうって考えてた。
でもその、コーフィーの表情を観て泣いてしまうポールを観たとき、本当に胸が痛くなって、ポールが抱えているであろう無力感、悲しさ、そういうものがぐわっと伝わってきた。
これか、こういうことか、と思った。
そしてラストシーン。
「メダル、早く返したいよ」と苦笑する姿。そっと遠くを眺めて「グリーンマイルは長すぎる」とひとりごちる姿。
そのすべてが、それまで見たどの回よりも美しく見えた。もともとのビジュアルのよさと120パーセント引き立てる佇まいと表情の作り方。パーフェクト!
コーフィーが死ぬことでしか救われなかったように、ポールもまた死ぬことが救いになってしまったけれど、どうかポールに、長すぎるグリーンマイルをいつかゆっくりと歩き終える日が来ますように。そう願わざるを得なかった。
そういう、個人的に「すごい今日はベストアクトだ(;ω;)」と思った回が私の誕生日の日の夜公演で、とんでもない誕生日プレゼントをもらった夜でした。