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ロマンはどこだ?

そのとき思ったことをなかったことにしないために

『あと少し、もう少し』瀬尾まい子

 

あと少し、もう少し (新潮文庫)

あと少し、もう少し (新潮文庫)

 

 中学駅伝の話。6区なので6人の選手が登場、それぞれがお互いに少なからず影響しあいながら、関わり合いながら、頼りにならない顧問の上原先生と一緒に駅伝大会を目指していく。

春から秋にかけてという時間軸を6人がそれぞれ振り返るんだけど、1つの出来事について多角的に語られるということもなく、それがくどくなくてよかった。

すごく大人ぶって試行錯誤して自分のキャラ、立ち位置をそれぞれ確保しようと模索するんだけど、結局、中学生なんて所詮周りの大人には敵わない。顧問の先生、両親、担任、それぞれに結局悪い言い方をすれば見透かされている。でも大人はそっと背中を押すだけで、いつも一歩を踏み出そうをするのは生徒たちのほうで、すごく青春の匂いがした。

走り終わることが目標なんだけど、まだ走りたいと駆け抜ける中学生の姿はとても眩しい。

 

あとここから先はネタバレ+加藤シゲアキの話も交えた感想

 

俊介という、桝井先輩を好きかも知れない、と悩む少年が出てくる。悩むといっても、この本の中では「人にそれを打ち明けるか否か」ということが焦点であり、同性愛は「人と違うこと」という点でしか語られてはいないんだけど。渡部の「おばあちゃんとの2人暮らし」と同じようなこと。

俊介は仲のいい友達に桝井先輩のことを相談しようとするんだけど、友達はたくみに話を反らす、というくだりがある。それは私にとってはすごく不思議な話の流れだった。話聞いてあげればいいじゃん、友達なんでしょ?みたいな(笑)

 

で。シゲの短編集の書き下ろし「にべもなく、よるべもなく」には友達が同性愛であることを知り「知ろうとする」少年が出てくる。私はこの話自体は好きな んだけど、少年の行動原理はいまいちぴんときていなかった。でもツイッターで見かけた男性の感想で、「男性としてはあの行動は共感できる。その年齢の男 は、友人が自分と異質なものになることをすごく恐れる」というものがあって、なるほど、これは私が女だから共感できなかったのか、と思った。

(あんまり男だからとか女だからとかいうのはこの時代にナンセンスかも知れないんですけどそこはひとまずおいといて)

 

このお話の、「友達が話を反らす理由」もそういうことなのか。その理由については触れられてないんだけど、きっとそこには「友達が自分と異質なものであることの恐れ」があるのではないか。そして友達は「仲が良い」からこそ俊介の話聞いてあげられなかったんだろうなぁ。逆に俊介がそれを打ち明ける渡部先輩は少し離れた距離だからこそ聞けたという点もあったと思うな。

 

女性作家っぽいとかBLっぽいとか書評もあるようだけど、個人的にはわりと男子中学生の視点に忠実なのでは?と思った。まあ私は男子中学生だった時期がないんで正確かどうかはわかんないんですけども笑