ロマンはどこだ?

そのとき思ったことをなかったことにしないために

音楽劇『プラネタリウムのふたご』感想

いしいしんじさんの「プラネタリウムのふたご」を原作とした舞台を観てきました。

www.planetarium-twins2020.com

 

※以下、ネタバレは配慮してません※

面白かった!

演出家のウォーリー木下さんはハイキューの舞台(ハイステ)の演出もされていて、ハイステと感じが似ているな、と思った。私はハイステしか知らないけれど、群像劇というところがウォーリー木下さんの持ち味なんでしょうね。

・群像劇

・台詞をみんなで輪唱したり追いかけたり重ねたりするところ

・役者さんが場面によって別の役割を演じる(とあるシーンで村人だった人がとあるシーンでは奇術師だったり)

 

セットチェンジはなく、シンプルな段差(野外ステージの客席みたいな)ところを、プラネタリウムだったりサーカスだったりの客席に見立てて、物語が進んでいく。

ステージまんなかにぐるぐる回る円形ステージがあるんだけど、それもキャストさんたちが回してた。椅子とかもだいたいキャストさんたちが運ぶし。

村はずれの魔女の家の世界観が好きだったな。魔女の家の家具に扮するキャストたちが「イのない手紙」を読むとき、「イのない世界」をみんなで歌う。あれこそ、小説ではできない、舞台化ならではの世界の広げ方だった。

13年間ずっと一緒だったプラネタリウムのふたごたちは、前半の最後で遠く離れてしまう。物語の後半はテオ一座に所属したテンペルと村で郵便配達員をするタットルの二人の世界が、舞台上で交錯して複雑に絡み合っていて、息も付けぬ展開、とても面白かった。まさに「空でつながっている」だったな。熊が撃つ銃と熊を撃つ銃。

 

村のプラネタリウムの解説員、『泣き男』を佐藤アツヒロさんが演じていたんですが、とてもかっこよかった。立ち振る舞いが素敵で、雰囲気があった。なんならちょっとオーラあったもんな。オーラまで出ちゃうと泣き男のイメージとはちょっと違っちゃうけど笑

まず顔が強く良いじゃないですか、圧倒的に。眼鏡も良かった。声も良かった。

最後の挨拶のところでキレのいいジャンプして「ひえ~~!!!」ってなった。捌け際の手を振る姿も様になっていて、なんか、さすが光GENJI……!!!!と思った。

 

テンペルとタットル、すごく似てる二人を見つけてきたもんだなあ。最初着てる服がほぼ一緒だからどっちがどっちかわかんなくなったよ(そういう演出だけど)。無邪気に笑ったり、駆けたり、走り出したり。少年!って感じでかわいかった。

それと、兄貴の手品がすごくて普通に見入ってしまった。あとあと見たらほんとに手品やってるかただった。納得。個人的には、兄貴のことはもうちょっと掘り下げてほしかったな~。でもエピソード絞って現時点で上映時間、三時間弱ぐらいあるもんな。難しいか。

どの役者さんも芸達者で雰囲気出ていてすごく良かったんだけど、唯一、これ終わったあともずっと言ってたんだけど、栓抜きが。栓抜きの背が、テンペルより大きくて、違和感があった。演技はとても素敵で、最初ホールで働きまわってるときの「暗い目」とそのあとの手品習うあたりの「生き生きとした目」がガラッと違っていて説得力があった。表情も衣装も動きも子供っぽさがにじみ出ていた。ただ、でも単純に「でかい」という圧倒的な事実があるので、やっぱり「少年」として見ることは出来なかったなあ。

この物語のなかで栓抜きがやってしまったことは、「思慮深くない子どもだからやりかねない」ことだと思っていたんだけど、身長の影響で「青年」として見てしまったので、「なんでそんなことしたの?!」という気持ちが強くなっちゃった。そこにだまされる才覚は私にはなかった。。。

 

 

舞台化するにあたり、原作のなにかを拾ってなにかを拾わない、というところが当然出てくると思うんだけど、この舞台では「お母さんを探す」色が強かったな。

私は

ひとはみな、うしろにまわした六本目の指を、ひそやかにつなぎあっているのです

という台詞がすごく好きなんだけど、それはあまりフューチャーされてなかった。

原作の感想見てたら「兄貴と犬」という単語が出てきたけど、犬、なんだっけ?原作読み直そう。


だまされる才覚が人にないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。

これは出てきた。劇中ずっと言っているわけじゃなくて、最後の最後に語られて、ああ、たしかにそうだなあと劇全体を振り返った。手品も、プラネタリウムも、熊も、村はずれの魔女の手紙も。

演劇、コンサート、ミュージカル、映画、そういうものは『だまされる』からこそ面白い。

いろいろな『だまし』があるけれど、プラネタリウムのふたごは、基本的にいい人たちで世界が成り立っているから、優しいだましかたで、それがとても好き。

舞台もそういう、優しさでつながった世界のままだった。すごく好きな舞台だった。

 

ちなみに、プラネタリウムのふたごについて考えるときは、ずっと、ポルノグラフィティの「グラヴィティ」を聞いている。

 

本当はこの曲はいしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」に影響を受けているんだけど、私のなかではなぜかずっと「プラネタリウムのふたご」のイメージなのでした。