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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ2022(2/11夜公演)感想

www.hedwig2022.jp

 

観てきました。

すっっっごかった。

コンサートの中でヘドウィグが今日このコンサートにいたるまでを語るという形式なので歌が多いんだけど、1曲目のエネルギッシュな歌声に圧倒されて泣きそうになった。わたしはこういう、圧倒的なエネルギーを感じたくて現場に行くんだなあと改めて実感した。

丸山くんの演じるヘドウィグは開けっ広げでストレートで少々下品なところもあり、パワフルで、だけどとてもかわいい、魅力的な人間だった。いちもつ銜えてズボズボしてるときの音とか、すっっっごくて笑ってしまったな。迫力満点。

だけどそういう爆発的なシーンがあるからこそ、ヘドウィグがただただ静かに、自分の上を通っていった男たちのことを語るシーンの静謐さが響いた。そこには小さな少女がいる。

傷ついても裏切られてもひさすらに走り続けるヘドウィグ。そして今隣にいる、イツハク。ヘドウィグとイツハクのやりとりいつも殺伐としていて、そこに愛があるのかよく分からなくてちょっとドキドキしてしまったw イツハクは、自分をいまの場所から連れ出してくれるだれかを求めていただけなのでは?と思って(それはヘドウィグ、ひいては少年ハンセルも同じか?) 最後の最後に二人の本当の関係性ははっきりと分かるし、パンフレットでも「すごく好き」って言ってたから、大丈夫だったんだけど。お互い、すごく好きだけど嫌いなところもいっぱいある、二人の関係性。目的が「ここから連れ出してくれること」だったとしても、「それを叶えてくれたひと」のことを愛することになんの不思議もないですね。うんうん。

 

加藤さんも1月のラジオで「丸山くんヘドウィグやりますよね、すごいことですよ」と話題にしてました。過去にも何人もの役者さんたちがヘドウィグを演じてきている。それぐらい、この舞台の主演を務めるということは素晴らしいこと、そしてとても大変なことだと思います。

私は山本耕史さんの「ヘドウィグアンドアングリーインチ」を一度観たことがあり、なにがなんだかわからないがすごい…!(よしもとばななさんのBurn帯コメントか?)という気持ちになった。そのときは、下半身ジョークに関しては大人しめかな? と思ったんですね。三上博史さんのフェラがすごいとか聞いていたので。そういうのはなかったと思う。

(ただ、パンフレットを読んだら、今回の演出家、鈴木勝秀さん(SEMMINARの演出したかた)が耕史のヘドウィグも演出してらしたそうなので……記憶間違ってる可能性なきにしもあらず)

で、そういう少し丁寧なヘドウィグアンドアングリーインチをイメージして観に行ったらぜんっぜん違って腰が抜けた。これがヘドウィグアンドアングリーインチなんだな…!

歌詞は英語だったり日本語だったり。聞き取れないとストーリー分かりづらいかな? とも思う。映像が分かりやすかったから大丈夫かな。パンフレットに日本語歌詞出てた。

 

ヘドウィグアンドアングリーインチは、ヘドウィグが少年ハンセルだったころ、小さいころ母親に聞いたプラトンの物語のなかに出てきた、「自分のカタワレ」を探すお話です。カタワレなんて、「ガラスの仮面」通ってきたひとみんな好きじゃん…?(くそでか主語)魂の半身だよ……。

パンフレットによると、ヘドウィグアンドアングリーインチはアジアでは日本と韓国で人気があるらしい。韓国は南北分断の歴史があるからなんだって。興味深い。日本で人気の理由は、パンフの対談読んでもなんかよく分からないな…って思ったけど、ガラスの仮面の文化圏だからっていうのもほんのちょっとある気がした。どうでしょう?!

ヘドウィグはドラァグクイーンでめっちゃ派手な女物の恰好をしてステージに立ち続ける。ドラァグクイーンとして求められる立ち振る舞いをするので、上品ではないけれど基本女性の動き方なんです。

で、ヘドウィグが一時期「カタワレ」だと思っていた、年下の、トミーという男の子。彼はヘドウィグが性転換をしたときにミスで残ってしまった1インチのペニスを触らされたとき、思わず拒絶してしまう。でもヘドウィグに教えてもらった仕草や一緒に作った曲を使ってデビューして、全米で人気を博した。ヘドウィグはトミーのバンドツアー(会場がめちゃでかい)を追いかけるようにツアーしてる(小さいところで)

最後の最後で、丸山くんがヘドウィグではなくトミーの台詞を言い、トミーとして歌うところがあるんだけど、そこが、ヘドウィグと全然歌い方や立ち振る舞いが違って、二人の人間がそこにいるんだと、感動した。奇抜なメイクもウィッグも全部取り払ってパンツいっちょだからビジュアルからして「トミー」なんだけど、でも、たたずまいにも説得力があったんだよね。ハッキリと男声になった。

パンフレットで本間さんが「マルちゃんは高音から低音までが出せるから」という話をしていた。なるほどたしかに。

パンツいっちょで歩くトミー、というかヘドウィグ、胸筋がぷるんぷるん揺れててかわいかったな。加藤さんも胸筋すごいって増田さん言ってたけどもしかしてああやってぷるんぷるん揺れるのかな……気になる……。

70年代に少年だった設定なので、いま50近く。なくはないのか…🤔

2022だからこそのセリフは面白かったな。

「コロナの影響で、去年のツアーは1日おきにPCR検査をやっていて費用がかさんでツアーやってもやっても赤字」

「LとかGとかBとかTとか!QとかAとか!」

 

余談ですけど、草彅剛さんの映画「ミッドナイトスワン」を「歌舞伎町のヘドウィグアンドアングリーインチ」とおっしゃっていたひとがいて、たしかに……たしかにな……と深く納得したことを覚えています。

ミッドナイトスワン、パンフレットでも話に出てきたな。トランスジェンダーが題材のものとして。同じところに金八先生第六シーズンも書いてあって、「ハセケン!!」って思ったよ。トランスジェンダーハセケンじゃなくて直だけど。

パンフレットといえば、丸山くんが「これまでに僕が経験してきた人との出会いや別れがなにかの糧になる」って言っててさ。エイトを脱退していったひととのことも、ヘドウィグの台詞をいうときに糧になってるんだろうなと思った。丸山くんは残ったほうだし、エイトと、亮ちゃんすばるくんがヘドウィグとトミーみたいな関係かというと全然違うんだけど。だけど、いまの丸ちゃんが、2022年にこれを演じることは、運命目いていて意味があるように思えた。